2014年3月18日火曜日

ウクライナ(2):クリミアの「民族自決」は習近平には刃:ウクライナ危機によって、中国の外交政策の中心にあいた矛盾

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●18日、新浪網は記事「ロシアメディア:国連安保理のクリミア批判決議で中国が棄権、意外だった」を掲載した。中国は必ずしもロシアに追随せず、独自の立場をとっていると論じている。資料写真。


2014.03.18(火)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40200

中国外交とウクライナ:試される内政不干渉の原則
(英エコノミスト誌 2014年3月15日号)

ウクライナ危機によって、中国の外交政策の中心にあいた穴があらわになった。


●内政不干渉を強調する中国だが・・・〔AFPBB News〕

 覚えの悪い相手には、何度でも繰り返す。
 中国外交部での記者会見が、同国の政策における内政不干渉の原則の重要性を強調せずに終わることはほとんどない。
 最近では、ウクライナに関する立場を質問されると、報道官は必ずこの原則を持ち出す。

 だが奇妙なことに、ロシアはクリミアの編入を巡り、想像し得る最も粗野な方法でウクライナの内政に干渉しているが、報道官がウラジーミル・プーチン大統領やロシアを批判することは決してない。
 西側の外交政策に偽善の疑いがあればすかさず噛みつく中国だが、今や自らもダブルスタンダードを主張しているようだ。

 実際のところ、中国は以前からずっとそうだった。
 しかし、今回のウクライナの危機は、中国の「原則に基づいた」外交の矛盾をさらけ出した。

 中国は明確にロシアの側についているわけではない。
 むしろ、すべての当事者に対し、対話と交渉を通じて相違点を解消するよう求めている。
 米国が既に実行し、欧州が今後実施の可能性があると警告している制裁には反対の立場だ。
 さらには状況の「複雑さ」についてくどいほど言及している。

 しかし、米国は中国に働きかけ、ロシアを明確に非難するよう説得しているものの、今のところそうした動きはない。
 バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席の間で電話会談が持たれたが、それでも中国の台本が書き換えられることはなかった。
 中国の報道機関によれば、習主席と中国は「すべての当事者が対話と協調によって互いの相違に向き合う」ことを望んでいるという。

■中立の姿勢は実質的なプーチン支持

 ロシアの弱い者いじめ的なアプローチに関し、中国は建前として中立の姿勢を取っているが、この態度は実質的にプーチン大統領の支持につながっていると、シンガポールにあるリー・クアンユー公共政策大学院の黄靖氏は指摘する。

 中国の指導部にとってこうした姿勢が最善の選択に見えるであろう理由はいくつか考えられる。
 まず、ロシアは中国と同様に国連安保理の常任理事国であり、戦略的、外交的に重要なパートナーだ。
 ロシアはイランやシリアをはじめとする様々な国際問題で、中国と歩調を合わせ、米国とは反対の立場を取っている。

 また、2月にビクトル・ヤヌコビッチ氏をウクライナの大統領の座から引きずり降ろした民衆の力による革命とされる動きをロシアは嫌悪しているが、これは中国も同様だ。
 ヤヌコビッチ氏の失脚につながった首都キエフ中心部での衝突は、一部の人にとって、失敗に終わった1989年の北京での民主化運動を思い起こさせるものだった。

 この民主化運動以降、東欧や旧ソ連諸国、さらに3年前には中東でこのような動きがあるたびに、中国の指導部は自国民がどう反応するのだろうかとやきもきしてきた。

 案の定、今回もマイクロブログサービスの新浪微博では、一部ユーザーが詩的な例えを披露した。
 多くのフォロワーを持つある人物は、
 「キエフの夜明けは近い。
 中国の首都にかかる月は、いつまで満月でいられるだろうか?
と問いかけた。
 この投稿はその後、検閲によって削除された。

 ロシアと同様、中国はヤヌコビッチ氏の失脚につながった政情不安の背景には西側の干渉があると見ている。
 中国の国営通信社、新華社は3月7日付の論説で、ウクライナにおける西側の「失態」をこう嘆いている。
 「民主的と称する、西側支持の政府を設置するという西側の戦略は、何一つ成果を上げることができなかった。
 それどころか、自らが引き起こした混乱を収める能力も、知恵も持ち合わせていない」

 中国共産党の日刊紙、環球時報は、
 「世界はロシアの抵抗を、西側の列強に対する多くの国の不満と捉えるべきだ」
と主張している。

■西側の干渉はダメだが、ロシアの干渉はいい?

 このように、西側の干渉とされる行為については積極的に非難しながら、中国の報道官はロシアによる同様の行為については口をつぐみ、時には好意的な態度さえ示している。
 しかし、こうしたやり方によって中国が孤立する気配はない。
 その他のアジア諸国も、ウクライナに関しては当たり障りのない発言が相次いでいる。

 インドの国家安全保障顧問を務めるシブシャンカール・メノン氏は「満足のいく解決」を目指してほしいという偽善めいた希望を表明しつつ、「ロシアとその他の国々の正当な権益が関わっている」点を認めている。
 インドは防衛をはじめとする案件で長年にわたるロシアとのつながりがあり、さらに現在は米国との関係がややぎくしゃくしている。
 インドは恐らくロシアと同様に、場合によっては近隣諸国への影響力を行使したいとの腹づもりがあるのだろう。

 日本でさえも、先進7カ国(G7)が表明したロシアへの激しい非難に名を連ねたものの、それ以外では率直な態度を示すことがなく、制裁の適用も回避したい意向だ。
 安倍晋三首相が率いる政権は、ロシアとの関係改善を重視している。
 ロシアは日本にとって重要なエネルギー供給国であるとともに、日本が領有権を主張する北方4島を実効支配している国でもある。

 中国にとって、ロシアによるクリミア併合は、同国の外交政策の最も基本的な原則に反する出来事のように見える。
 しかも、それ以上に気がかりな点もある。
 3月16日にクリミアで行われる、ロシアによる占拠の是非を問う住民投票は、中国にとっては空恐ろしい概念をはらんでいる。
 仮にチベットやウイグル民族が、その国際的な地位を問う投票の機会を与えられたとしたら、と考えてみれば分かるだろう。

 もう少し非現実的ではない事例としては、台湾に住む人々の場合が考えられる。
(インドも同じような不安を抱いているに違いない。インドが実効支配し、パキスタンが領有権を主張するカシミール地方の一部と、厄介な共通点を見出しているはずだ)。

 北京にある中国人民大学に所属する国際関係の専門家、時殷弘氏は、このような国民投票は中国にとって決して認められないと強調し、習主席がプーチン大統領に対し、投票の中止を要請していると述べた。
 ただし、
 「それでも中国が公にロシアを批判することはあり得ない」
と言う。

■弱いものいじめに活路を見いだす中国

 もし時氏の言う通りであれば、中国は二兎を得ることを狙っているのだろう。
 ロシアを批判することはないが、あからさまにロシアの側につくこともなく、西側を敵に回さないようにしている。
 その一方で、中国の外交政策の「原則」は絶対的だとしきりに主張し続けている。

 中国の近隣諸国は多くが同国との領土紛争を抱えているが、こうした国々にとって、ロシアがその勢力圏で取っている強引な戦術について中国が意見を表明しないことは、中国自身が自らの権利を主張する地域で同様の戦略を採用する可能性を示唆しているように映るだろう。

 中国の王毅外相は、中国は「私たちのものなら寸土といえども必ず守る」と明言している。
 これには恐らく、中国が実効支配していない地域も含まれているはずだ。
 中国はロシアと同じく、
 弱いものいじめをする国と見られることで、何かを得られると考えている
のだろう。

 しかし、こうしたやり方は代償を伴う。
 中国の政策には一貫性がなく、日和見主義に映り、国のイメージやソフトパワーが損なわれてしまう。
 もし本当に世界的な大国として尊敬を得たければ、世界的な責任を果たさなければならない。
 状況が厄介になったからといって、その役割を投げ出すことなどできないのだ。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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レコードチャイナ 配信日時:2014年3月19日 5時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85072&type=0

クリミアの「民族自決」は習近平には脅威
――国内の少数民族独立と親ロとの板挟み


●ウクライナのクリミヤ自治共和国における住民投票は、96.77%という圧倒的多数で「ロシアに帰属する」方に軍配が上がった。ロシアはクリミヤを独立国家と認めただけでなく、ロシア編入に関しても同意した。写真はモスクワ・赤の広場。

 ウクライナのクリミヤ自治共和国における住民投票は、96.77%という圧倒的多数で「ロシアに帰属する」方に軍配が上がった。
 ロシアは「これは住民の意思決定だ」として、クリミヤ自治共和国を独立国家と認めただけでなく、ロシア編入に関しても同意した。

 欧米諸国は、そもそもこの住民投票自体がウクライナ憲法や国際法に違反するとしていた。
 プーチンがロシア編入にまで踏み込んだことにより、ロシアに対する制裁を強化する方向で欧米諸国は「概ね」一致している。
 日米同盟がある日本にとっては、アメリカと歩みをともにしなければならないが、北方領土解決のために安倍政権が取っている親ロ姿勢との間で板挟みになっている。

 しかし習近平が置かれている板挟みは、さらに深刻だ。
 なぜならクリミヤの住民投票による「民族自決」は、そのまま中国国内の新疆ウィグル自治区やチベット自治区の「民族自決」と相似形を成すからだ。
 ロシアの側に立ってクリミヤ住民の「民族自決」を容認するなら、自国のウィグル民族やチベット民族による「民族自決」すなわち「独立」を認めるという論理につながってしまう。

 だから中国としてはクリミヤの住民投票を「無効」とする欧米側に立ちたかったが、何と言っても「合法」と主張しているのは戦略的パートナーとして最も親密な関係にあるロシアだ。

 その結果、3月15日に国連安保理事会で出された住民投票を「無効」とする採決案に対して
 中国は棄権
した。
 周知のようにロシアが拒否権を行使したので、この採決案は否決されたが、中国が「棄権」という選択肢を選んだところに、習近平の苦渋が滲んでいる。

◆矛盾する民主主義の原則

 中国には漢民族以外に55の少数民族があり、特に
★.中国の全面積の16.7%を占める新疆ウィグル自治区と
★.12.7%を占める西蔵(チベット)自治区
の場合は独立傾向が強く、暴動が絶えない。
 その暴動を武力で抑えている中国としては、自らの運命を各民族が決めていいなどという「民族自決」行動は、絶対に許されないのである。

 新疆ウィグル自治区やチベット自治区はウクライナに組み込まれていたクリミヤ自治共和国と同じで、より強大な力によって民族の尊厳を踏みにじられ、より大きな力を持っている国(中国)に組み込まれてしまった。 
 組み込まれるときから「民族の独立」を叫んで抵抗してきたが、鎮圧された状態になっているのが現状だ。

 クリミヤ同様、もしウィグル族やチベット族が民族自決という手段で独立を勝ち取ろうとしたら、どうだろう。
 欧米西側諸国は、それは
 「中国の憲法に違反する」とか
 「国際法に違反する」
として少数民族の独立を非難して中国政府側に付き、中国政府側を守ろうとするだろうか。
 決してしないだろう。

 このたびのクリミヤの住民投票は、たとえロシア軍の影がちらついていたとしても、住民が命がけで守った「民主的な投票行動」という、まさに民主主義の原則に則って住民が自ら選んだ意思表示だ。
 それを「違法」と断罪する欧米の非難は、中国にとって、実は大変ありがたいことで、是非とも、その同じ非難をウィグル族やチベット族の独立運動に対しても言ってほしいと思っているだろう。
 しかし実際は、アメリカにはウィグル族の亡命政府があるし、インドにはチベット族の亡命政府があり、オバマはその長であるダライラマと会談もしている。

◆「民族自決」におののく習近平

 もしその国の憲法と国際法に基づいて、当該国に編入された区域あるいは民族を、住民投票によって独立させてはならないとするならば、この亡命政府も受け入れてはならないし、ましていわんやオバマがダライラマと会談するなどということもあってはならないはずだ。
 しかし会談するだけでなく、西側の価値観は中国の少数民族弾圧を非難し、中国の民主化を望んでいるのではないのか。
 中国から見ればこれは「内政干渉」で、今般の住民投票を「無効」と主張する欧米側の論理とは相容れない。
 欧米も矛盾していれば、中国もまた矛盾しているのである。

 プーチンは、欧米の非難は「これまで欧米が主張してきた民主主義の原則に反している」と反撃。
 東西ドイツが一つになった例を引いて、「民が選んだ結果」を重んじるべきで、軍事クーデターや反政府テロで政権を奪還したウクライナ暫定政権こそ非合法と断罪した。
 選挙による民主主義の原則に対する主張の立場が、ロシアと欧米で逆転した格好だ。

 中国は日米に対抗するためにもロシアとの親密度を常にアピールし、親ロ路線を取ってきた。
 しかしクリミヤの「民族自決」には断固反対したい。
 だというのに中ロ関係を重視して「反対」を叫べないでいる。
 まさか、ここで欧米側に付くなどということは絶対にできることではない。
 そのようなことをしたら共産主義の統治理論を破壊する。
 しかし、ひとたび住民投票による民族自決の方法を認めてしまえば、
 中国は一瞬で内部崩壊するし、
 また悲願の台湾統一も不可能となり、台湾の独立派を認めることにつながってしまう。

 ウクライナ問題は決して中国が高みの見物をして「にんまり」しているわけではない。
 たしかにロシアもアメリカも中国を味方につけたいと思っているだろうが、
 しかし習近平自身は「民族自決」におののいている。
 国家崩壊につながりかねない爆弾を内包しているからだ。

<遠藤誉が斬る>第25回)

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。



レコードチャイナ 配信日時:2014年3月19日 13時36分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85084&type=0

中国とロシアの距離感とは
=中国がクリミア批判決議に棄権、独自の立場示す

2014年3月18日、新浪網は記事
 「ロシアメディア:国連安保理のクリミア批判決議で中国が棄権、意外だった」
を掲載した。

 17日付ロシア紙コメルサントは世界兵器市場について報じた。
 2009~2013年のシェアで見ると、米国が29%でトップ。
 ロシアが27%で2位。3位が7%のドイツ、4位が6%の中国、5位が5%のフランスとなる。

 米国がトップ、ロシアが2位という兵器輸出シェアの構図は長年変わっていないが、今、急速にシェアを伸ばしているのが中国だ。
 ロシアから兵器を輸入していた中国だが、コピー品も含め独自の兵器の開発に成功。
 ロシアよりも安い価格で輸出している。

 中国とロシアは兵器輸出の点で鋭く対立しているが、それだけではない。
 あらゆる問題で中国は自国の国益を追求する独自の立場をとっており、必ずしもロシアに追随してはいない。
 先日、国連安全保障理事会でクリミア独立住民投票の批判決議をめぐる投票が行われたが、中国はロシアに肩入れすることなく棄権、驚きを与えた。



【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】


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