2014年4月10日木曜日

ウクライナ(5):流出するミサイル技術、金に糸目をつけない中国は最上のお得意さん

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●4日、ロシアとウクライナの国防部門の協力が中断することによって、ウクライナの持つミサイル技術などの軍事技術が拡散する恐れがある。ロシア紙は軍事技術を手に入れる可能性が高いのは中国やイスラエルであると指摘している。写真は中国海軍北海艦隊の演習。


レコードチャイナ 配信日時:2014年4月9日 7時10分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86213&type=0

ウクライナのミサイル技術、金に糸目をつけない中国へ流出する可能性―ロシア紙

 2014年4月4日、ロシア紙ニェザヴィーシマヤ・ガゼータ(独立新聞)は、ロシアとウクライナの国防部門の協力が中断することによって、ウクライナの持つミサイル技術などの軍事技術が拡散する恐れがあると報じた。
 軍事技術を手に入れる可能性が高いのは中国やイスラエルであると指摘している。
 6日付で中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。

 ウクライナは現在でも旧ソ連から引き継いだ多くの軍事技術を持っており、大陸間弾道ミサイル(ICBM)SS-18などのミサイル技術も含まれている。
 ウクライナの軍事産業はこれまで、ロシアからの注文に依存してきたが、ヤヌコビッチ政権が崩壊し、現在はロシアへの軍備提供が一時停止した状態になっている。
 暫定政府はテレビ局のインタビューに対し、西側との協力を通じて軍事産業を改造したいと答えている。

 ウクライナの軍事産業はロシアからの注文がなくなればほどなく破産に追い込まれることになる。
 一方で、イスラエルや中国など、ウクライナの軍事技術に興味を示す国も存在している。

 欧州でのネオナチズムの台頭に反発するイスラエルは、ウクライナの持つミサイル技術に興味を示している。
 また、中国は初の空母「ワリャーグ(現在は遼寧に改名)」の艦体をウクライナから購入するなど軍事面でも密接な関係を築いていたため、今回の政変についての論評を避けており、今後もウクライナとは良好な関係を維持したいと考えている。

 ウクライナの軍事産業が破綻した場合、まず軍事産業が私有化され、一部あるいはすべてが売却されるだろう。
 そして、軍事産業に携わっていた職員(特に責任者)が技術データを売却する可能性がある。
 技術専門家を国外へ渡らせた後に重要な技術データを復元させるケースも考えられる。
 さらには、中国は必要な技術には金に糸目をつけないため、臨時政府がその資金に目をつけて、技術やデータを自ら売り込む可能性もある。

 こうした状況になれば、オバマ米大統領はクリミア情勢にはかまっておられず、もし中国政府がこれらのミサイル技術を手に入れれば、米国の世界のリーダーとしての地位は危ういものになるだろう。



レコードチャイナ 配信日時:2014年4月9日 0時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86209&type=0

ウクライナでの中国の影響力、日本は外交活動強め排除狙う―露メディア

 2014年4月7日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語電子版はロシアメディアの報道として、日本がウクライナに対する外交活動を強め、中国の影響力を排除しようとしていると伝えた。
 日本の外相が今月末に予定していたロシア訪問をキャンセルする可能性があるとも伝えている。

 ウクライナ外務省は、同国臨時政府の外相が日本大使と会談し、日本が提供した15億ドル(約1547億円)の経済援助および国際社会での支持表明に感謝の意を伝えたとする声明を発表した。
 日本大使がウクライナの主要メディアに明かしたところによると、国連は3月27日にロシアのクリミア併合を無効だとする決議を採択したが、日本は他の100カ国とともに賛成票を投じただけでなく、決議の共同提案国にも名を連ねている。

 ロシアの日刊紙ニェザヴィーシマヤ・ガゼータは、
★.ウクライナに多くの利権を得ている中国がクリミア問題で中立的な立場を取る一方で、
★.中国との間で領土紛争を抱える日本はウクライナで積極的な外交活動を展開し、自国の影響力を高めるとともに、中国の影響力を弱め、排除しようとしている
と指摘した。
 また、日本はウクライナ危機以前にはロシアとの関係も重視しており、今回の対ロシア制裁でも他の欧米諸国ほど厳しい姿勢をとっていないと伝えた。

 ロシアは5月9日に第2次大戦勝利のイベントを行い、その翌月にプーチン大統領が中国を訪問する。
 ロシアの政治アナリストは、日本による中国侵略という歴史問題について、ロシアがどのように中国と一致した立場を示すかどうかで、今後の露・日・中の3カ国関係の方向性を判断することができると述べた。



SankeiBiz 2014.4.3 05:00
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/140402/cpd1404022330009-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140410/mcb1404100500009-n1.htm

ウクライナ危機に見る中国の思惑

■=2 領土問題 台湾の動きを懸念

 ロシアによるクリミア自治共和国の併合という事態は、中国はじめアジア各国にも衝撃を与えた。
 元フランス外交官のチェン・ヨ・ズン氏は「今回の事態は中国にとっても大きなジレンマ」と分析する。

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 ウクライナ危機によるロシアと欧米との確執は、東西冷戦の再来を引き起こす勢いで世界を再び不安定な状態に陥れた。
 この1年間、北方領土問題の解決や天然ガスを中心としたシベリア資源開発などを目指してプーチン大統領に急接近した安倍晋三首相の対露外交も、この危機で急ブレーキがかかった格好となった。
 今回のウクライナ危機を「領土」と「天然ガス」の視点から分析したい。

 ◆武力による現状変更

 ウクライナ領土であるクリミアに対するロシアの執念をみると、北方領土で果たして簡単に日本に譲歩するか甚だ疑問を抱かざるを得ない。

 その上、クリミア奪取にみられる領土の「力による現状変更」がこうもやすやすと許されれば、中国との領土紛争を抱えている日本にとっては「力による」尖閣諸島支配の「現状変更」という悪夢が一段と現実味を帯びてきた。

 「力による現状変更」が「前例」となることに懸念を抱くのは日本だけではない。
 過去半世紀、常に中国に統合される脅威に直面している台湾も、この前例を盾に中国が「力による現状変更」を迫るのではないかと不安が高まっている。
 不安を如実に物語るのは馬政権の対中接近策に反対する台湾の学生の激しいデモと実力行使である。

 「武力による現状変更」の前例に戦々恐々なのは、中国と南シナ海での領土紛争を抱える東南アジア諸国も同様である。

 こうしてみると、いかにも中国が「クリミア効果」で漁夫の利を得ているように思われる。
 実際、ウクライナ危機に対して中国がとった曖昧でどっち付かずの態度がこの疑いを強めている。

 しかし、中国にとってもウクライナ危機から派生する懸念がないわけではない。
 何よりもまず、中国への統一に抵抗してきた台湾がこれを機に一段と独立に傾く懸念である。

 ◆住民投票、絶対認めず

 ロシアによるクリミア併合の大義名分はあくまでも「住民投票」であった。
 その大義名分を中国が認める素振りを少しでも見せてしまえば、台湾が「住民投票」を実施し、「台湾独立」という結果にでもなったら、中国はそれを阻止する根拠を失ってしまう。
 実際、台湾にはそのような住民投票法があるから、中国は内心穏やかではない。

 同じことは独立機運が盛んなチベットと新疆についてもいえるから、
 「住民投票による領土の現状変更」は中国としては絶対に認められないのである。

 この点に関しては日本も中国と立場は一致しているといえる。
  ロシア人しかいない今の北方領土で帰属を決める住民投票でも実施されたら、結論は火を見るよりも明らかである。

 このように、ロシアの横暴なクリミア併合に対して、国際社会が手も足も出ない事態は、極東にまでさまざまな影響を及ぼしている。

 ■=1 天然ガスめぐる駆け引き激化

 領土問題のほかにも、直接影響を受けるのは、日本も大きな関心を持つロシアの天然ガスをめぐる情勢である。
 エネルギーに飢える中国は、豊富な地下資源がある中央アジアに積極的に進出を図っている。

 中国の最終目標はその向こうの中東に到達することだ。
 同時に、中国はロシアの豊富な天然ガスにも食指を動かし、数年前から輸入交渉を進めている。

◆中央アジアに進出

 今まで、ロシアはウクライナを通過するパイプラインで天然ガスを欧州に輸出してきた。
 これまでも、さまざまな理由で機嫌を損ねたロシアがパイプラインの「元栓」を締めて欧州の消費国を苦しめた事件が何度か発生している。
 今回のクリミア併合というロシアの暴挙に、西欧が効果的に対抗できなかった大きな原因の一つは、この天然ガス依存度の高さがある。

 欧州各国はロシアへのガス依存度をいかに下げるかに以前から取り組んできた。
 カスピ海のアゼルバイジャンからイタリアまで延びるガスパイプラインの巨大国際建設プロジェクトも、ロシアの反対を押し切ってスタート。
 ロシア産ガスを減らすべく、天然ガスの輸入先の多様化を進める。

 一方、ロシアも欧州の景気低迷でガス輸出が伸び悩んだため、巨大市場の中国に売り込みを図った。
 したたかな中国はロシアの足元を見て買いたたこうとし、値段交渉は難航している。
 そこへ資源開発と北方領土返還の両方を求めて日本が急接近してきた。
 ロシアにとっては渡りに船で、シベリア開発への日本の協力を取り付けるだけでなく、「日本カード」を中国にちらつかせることで、対中国ガス輸出交渉を有利に進めようとした節がある。

 先のソチ五輪での首脳会談で、中国の習近平国家主席、安倍晋三首相の2人に対するプーチン大統領の対応の使い分け方には、このような両天秤(てんびん)にかける思惑が見え見えだった。
 先の安倍首相の靖国参拝に対するロシアのやんわりした非難も、この文脈からみると、日本に対する領土と資源の双方の「相場操作」に思えなくもない。

 しかし、ウクライナ危機で欧米と歩調を合わせた日本が、ロシア接近の動きを当面はやめざるを得なくなったことで、プーチン氏の「日本カード」も、しばらくは効力を失い、再び中国有利の形勢になったようだ。
 しかも中国は他にも布石を打っており、ロシアとのガス輸入交渉でさらに優位に立とうとしている。 
 その布石とは中央アジア進出だ。

 ◆経済利益にだけ興味

 中国はもともと「上海協力機構」という中央アジア中心の国際機構を活用し、ロシアとつながりが強い中央アジア諸国を自らの影響圏内に置きつつある。
 東側の日本、米国、台湾、東南アジアといった、友好的とは程遠い近隣環境とは打って変わって、西側の中央アジア諸国とはかなり良好な関係を築いている。

 この地域に対するロシアの帝国主義的アプローチは、反感と不信を呼んでいる。
 これに対し、中国は経済利益にしか興味を示さず、この地域にありがちな強権政権に対しても、欧米のように民主主義の理想と人権を振りかざして干渉することもない。
 豊富な資金にものを言わせ各国と経済協力を進めてきた。

 こうして、中国は約20年前から中央アジアにおいてパイプライン網作りにいそしんできた。
 今ではトルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンの3国をまたぎ、いずれはカスピ海の天然ガスを直接、中国東部まで運ぶ「中央アジア~中国パイプライン網」(CACP)を作りつつある。
 昨年9月、習国家主席はカザフスタンとこのCACPの仕上げについて調印し、中国から新たに50億ドル(約5100億円)がつぎ込まれることになった。

 最近はさらに、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタンを通るCACPのDラインの建設も発表した。
 中国は米軍撤退後の空白を埋める形でアフガニスタンへの経済進出を進めており、近い将来、CACPをアフガニスタンにも延ばすだろう。

【プロフィル】チェン・ヨ・ズン氏
 元フランス外交官。日本、米国、シンガポール、中国などに駐在。2012年に定年退官。慶応大大学院修了。台湾生まれ。



【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】



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