2014年4月3日木曜日

モンゴル:北朝鮮と気脈を通じる国、外交舞台に躍り出るモンゴルの内幕

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Newsweek 2014年4月2日(水)13時22分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/04/post-3233.php

外交舞台に躍り出るモンゴルの内幕
ニューズウイーク [2014年4月 1日号掲載]

横田夫妻と孫のキム・ウンギョンの面会がウランバートルで行われた理由
深田政彦(本誌記者)


●独自の外交力 チンギス・ハン像の前に立つエルベグドルジ大統領 Carlos Barria-Reuters

 緊張関係が続く日朝関係。
 トンネルの出口はまだはっきりとは見えないが、そんななか、ダークホースが仲裁役を買って出た。
 モンゴルだ。

 3月10日から5日間、日本の拉致被害者家族である横田滋・早紀江夫妻と北朝鮮に住む孫のキム・ウンギョンが面会したが、その場所は北朝鮮が主張していた平壌ではなく、モンゴルの首都ウランバートルだった。

 伏線は昨年9月にあった。
 日本の安倍首相はこの時、東京の私邸でモンゴルのエルベグドルジ大統領と非公式会談。
 以前から拉致問題に関心を寄せてきたエルベグドルジがその場で面会の設定を約束し、翌月には北朝鮮を訪れて調整したという。

 北朝鮮との仲裁の成功には、歴史的な背景がある。
 「モンゴルはモスクワでのパイプを活用した
と、モンゴル出身で静岡大学教授の楊海英は指摘する。
 同じ社会主義国でソ連の衛星国だったモンゴルと北朝鮮のエリートたちの間には、かつて留学先のモスクワで一緒に学んだ人脈が今も生きている。
 帰国後はそれぞれ母国で政治家や官僚となり、ソ連が崩壊してからも情報交換を欠かさなかった。
 中国が共通の「敵」だったからだ。

 北朝鮮とはひそかに経済関係も強化してきた。
 急増した中国人労働者に代わって、現在では北朝鮮から多くの労働者を受け入れ、北朝鮮の港湾都市・羅先の開発にも乗り出そうとしている。
 内陸国であるモンゴルに港はないが、シベリア横断鉄道などを経由して羅先を自国の豊富な資源の輸出港とすることができるからだ。

 長らく清朝に服属したモンゴルは20世紀に入ると、北はソ連の衛星国となり、南は内モンゴル自治区として中国に併合された。
 中ソ両大国に挟まれた国際環境で生き抜くため、モンゴルは独自の外交力を磨き、冷戦崩壊後は民主主義移行国の成功例として中央アジアで頭角を現した。

 チンギス・ハンの祖国という歴史の栄光はモンゴルを大国外交に駆り立てている。
 国連PKO(平和維持活動)はもとより、イラク戦争やアフガニスタン作戦にも積極的に参加。
 今では北朝鮮をめぐる「7者」協議参加やEU加盟も模索するほどだ。

 その志は壮大だが、人口は280万ほど。
 経済力や軍事力は周辺諸国と比べものにならないほど小さい。
 外交の調整役にはなれても北朝鮮を動かす力までは望めないと、楊は言う。



朝鮮日報 記事入力 : 2014/04/04 09:31
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/04/04/2014040400887.html

中朝貿易、張成沢氏処刑の余波で前月比46%減
張氏が担当していた地下資源の輸出が大幅に減少
今年に入り原油の輸入はゼロ
南北経済協力への期待が高まるとの見通しも

 今年2月、北朝鮮と中国の貿易量が前年同期に比べ14%、前月に比べると46%も減少したことが分かった。
 これは、中国との貿易を担当していた張成沢(チャン・ソンテク)氏が処刑された影響が徐々に表れ始めたものと考えられている。
 北朝鮮は昨年2月に3回目の核実験を行って以降、中国との関係が悪化した上、張氏の処刑以後は外交関係がさらに疎遠になった。
 そして今や、両国の間で続いてきた経済関係までもが弱まるのではないかとの見方が出ている。
 中朝貿易が衰退すれば、南北の経済協力に対する需要が増大する可能性がある。

■張成沢氏処刑の余波

 韓国貿易協会によると、今年2月の北朝鮮の中国に対する輸出額は1億5600万ドル(現在のレートで約162億1150万円、以下同じ)で、前年同期に比べ8%減少した。
 輸入額(9900万ドル=約102億8800万円)も前年同期に比べ21%減少した。
 輸出入額を合わせた総貿易量は2億5500万ドル(約264億円)で、前月(5億4600万ドル=約567億4000万円)に比べ46%も減少した。

 専門家たちは、張成沢氏の処刑の影響が、2月から徐々に表れ始めたものとみている。
 張氏が処刑された昨年12月と今年1月は、すでに契約していた分の取引があったため、貿易量はむしろ増加した。
 ところが、張氏の側近たちに対する粛清が本格化したことで、2月になってその影響が表れ始めたというわけだ。

 とりわけ、張成沢氏に連なる人物が主に担当していた地下資源の輸出が大きく減少した。
 石炭の輸出量は92万トン(7200万ドル=約74億8150万円)で、1月に比べ26%減少したことが分かった。
 鉄鉱石の輸出も19万7000トンで、1月に比べ23%減少し、マグネサイトの輸出(1万1000トン)も1月に比べ79%減少した。
 北朝鮮は張氏を処刑する理由の一つとして「地下資源を外国に安値で売った」という点を挙げた。
 一方、原油の輸入量がゼロという点も注目に値する。
 中国は今年1月から2月にかけ、北朝鮮に原油を輸出しなかった。
 これについて韓国政府の関係者は「これまでにも、年の初めには価格交渉などを理由に、原油の供給を1-2カ月中断するケースが多かったことから、対北朝鮮制裁の一環ではないとみられる」と語った。 

 だが、中国からの肥料の輸入量は大幅に増えた。
 今年、北朝鮮の農業で分組管理制(農作物の種類や耕地別の作業班の下に30-40人程度の作業グループ〈分組〉を組織する)が本格的に実施されるのを前に、生産性を高めるための措置ではないかと考えられる。
 北朝鮮は今年2月に離散家族の再会行事を行った後、内心では韓国による肥料の支援を願っていたが、ミサイル発射などの挑発により、自らその道を閉ざしてしまった。

■南北経済協力の需要増加

 専門家たちは、中朝の貿易量の減少は相当期間続くとの見通しを示している。
 張成沢氏の処刑により、中国への輸出品のうちかなりの部分を占めていた鉱物や水産物の輸出が低迷しており、また張氏が管轄していた首都建設事業も影響を受けることから、建設資材などの輸入が減少するとみられる。

 北朝鮮の中国に対する貿易ルート自体が崩壊したことも問題だ。
 中国にいる北朝鮮の消息筋は「昨年までは貿易のため北朝鮮から中国に来ている人が数百人いたが、張成沢氏の処刑後、一瞬にして姿を消した。
 中朝貿易ルートを再構築するためには少なくとも1年以上かかるだろう」と語った。

 中朝貿易が打撃を受けた分、南北の貿易に対する期待が高まるのではないかとの見方もある。
 IBK経済研究所のチョ・ボンヒョン研究員は
 「張成沢氏の処刑の余波で、今年1年間は中朝貿易が縮小せざるを得ない。
 これは北朝鮮が南北の経済協力に目を向けるきっかけになる可能性がある」
と指摘した。




【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】




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