2014年4月14日月曜日

尖閣防衛-⑦:ついに中国との対立を覚悟した米国?アジア諸国から見放されるアメリカの苦悩

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JB Press 2014.04.14(月)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40433

ついに中国との対立を覚悟した米国
米中「新型軍事関係」とは何か

 先週はチャック・ヘーゲル米国防長官が就任後初めて訪中している。
 同長官は習近平国家主席ら中国側要人と米中「新型軍事関係」構築に向け精力的に会談を行ったと報じられた。

 新型軍事関係?
 いったい何だそれは?
 というわけで、今週のテーマはヘーゲル長官訪中と米中関係の行方である(文中敬称略)。

■米中新型軍事関係


●中国人民解放軍の孫建国副総参謀長(右)に迎えられるチャック・ヘーゲル米国防長官(2014年4月7日)〔AFPBB News〕

 米中「新型大国関係」については本コラムでも昨年既に書いた。
 要するに、
☆.米国は中国が大国であることを認め
 大国中国の国益を尊重すべしとする中国側と、
☆.中国は新興大国として既存の国際秩序を尊重し
 既存大国に軍事的挑戦を試みるなとする米側との、
★.一種の「同床異夢」である。

 2012年2月、「新型大国関係」を最初に米側に提案したのは当時の習近平国家副主席だった。
 米側も当初はこの種の表現を使うことを意識的に避けていたようだ。

 ところが、昨年3月、当時NSC(National Security Council国家安全保障会議)大統領補佐官だったトム・ドニロンが講演でこの表現に間接的に言及して以来、状況は大きく変わりつつある。

 同年11月には後任のスーザン・ライス補佐官がアジア関係演説の中で、「When it comes to China, we seek to operationalize a new model of major power relations」と述べ、従来より踏み込んでいる。
 米側も遂に中国側の土俵に乗ったようだが、このライス演説、
 日本政府関係者の間ですこぶる評判が悪い

 一方、米中「新型軍事関係」なる用語が使われ始めた経緯は不明だ。

 昨年5月5日に中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」が関連論文を掲載したとの報道はある。
 恐らく中国側はその頃から米国に対し、軍事面でも「新型大国関係」に伴う新たな関係の構築を働きかけてきたのだろう。

 まずはスローガンとなる中国製「新語」を外国に受け入れさせ、それを勝手に定義して主導権を握ろうとするやり方は、いかにも中国らしい。
 天晴(あっぱれ)だ。

 一方米国側も、つまらない用語使用の是非で争うよりは、むしろ内容で勝負しようとしているのだろう。
 その典型がこの新型軍事関係のように思える。

■国防大学での発言

 4月8日、ヘーゲル長官は人民解放軍の国防大学を訪問し、学生の前で講演と質疑応答を行った。
 最近の米中軍事関係では珍しいことだ。
 さらに、その前日には米側の希望通り、ヘーゲル長官の中国空母「遼寧」の視察を認めている。
 今回中国側は米国の求める「透明性向上」に一生懸命応えたいのだろう。

 米国防総省が考える「新型軍事関係」を詳しく説明したこの講演内容は意外に内容が濃い。
 さらに、その後の学生との質疑応答はもっと面白いのだが、日本では一部全国紙を除き、この国防大学でのイベントの詳細は報じられていない。
 されば、ここではヘーゲル長官発言を中心にやり取りの一部を再現しよう。

●米国はアジア太平洋を含む全世界において、以下を伴う安定したルールに基づく秩序の維持を求めている
(Here in the Asia-Pacific and around the world, the United States believes in maintaining a stable, rules-based order built on:)

- シーレーンとその上空空域およびサイバー空間への自由で開かれたアクセス
 (free and open access to sea lanes and air space - and now, cyberspace;)

- 繁栄を促進する自由な貿易・経済政策
 (liberal trade and economic policies that foster widely-shared prosperity;)

- 危険かつ不安定な大量破壊兵器拡散の停止
 (halting the proliferation of dangerous and destabilizing weapons of mass destruction;)

- 侵略の抑止、および
 (deterring aggression; and)

- 国際法と整合性のある、明確、予測可能、一貫性のある平和的な紛争解決手法
 (clear, predictable, consistent, and peaceful methods of resolving disputes consistent with international law.)

●米国のアジア・太平洋へのリバランスは同地域での米国のプレゼンスと関与を確保し、同盟国への約束を再確認するものだ
(America's ‘rebalancing’ to the Asia-Pacific is about ensuring its presence and engagement and re-affirms its “commitments to our treaty allies)

●中国も米国と同様、その軍事的能力、意図および米中間の不一致点をより明らかにすべきだ
(should be more open about their “capabilities, intentions, and disagreements)

 要するに米国が言いたいことは、
★.中国の海空・サイバー空間への介入は許さない、
★.力による現状変更は認めない、
★.大量破壊兵器の移転は認めない、
★.より自由で透明性のある政策を採用すべし、
★.現在米国が維持している西太平洋の海洋秩序への挑戦は認めない、
ということに尽きるだろう。

■学生との質疑応答


●会見する常万全国防相(右)と訪中したヘーゲル米国防長官(左、2014年4月8日)〔AFPBB News〕

 尖閣列島の領有権をめぐる態度について、日米中間で大きな温度差があることはご承知の通りだ。
 米国は南シナ海・東シナ海の領有権問題について中立を維持し、いずれの側にも組しない。

 これに対し、日本は米国に日本の立場を、中国は中国の立場を支持せよと主張しているので、事実上出口がない。

 特に、米国のアジア村関係者の一部には、日本を支持することは不必要であるばかりか、有害ですらあるので、今後も中立を維持すべしとの議論がある。

 しかし、ヘーゲル長官と学生との質疑応答を読んでみたら、思わず笑ってしまった。
 そのような対中配慮などほとんど無意味となっているからだ。

 関連部分を再現してみよう。

●学生:
 (米国の立場は中立だと言うが)米国は明確にフィリピンに組しており、東シナ海でも日本を支持しているではないか
 (you are apparently taking sides when it comes to the issue with the Philippines. And when it comes to the East China Sea, you're taking sides with Japan!)

●ヘーゲル長官:
 領土問題に対する米国の立場は変わっていないが、フィリピンと日本は米国の長年の同盟国であり、米国には条約上の義務がある
 (The United States has not changed its policy on disputes, but the Philippines and Japan are long-time allies of the United States and we have treaty obligations with those two nations)

 何のことはない。
 中国は既に米国がフィリピンと日本を支持していると思っている。
 米国は領土問題について中立と言うが、実質的にはそうではない。

 中国側もこのことは、とっくにお見通しである。
 そうであれば、米国の中立論はあくまで対中配慮のための建前論に過ぎないではないか。

 そもそも、ヘーゲル長官は日本での防衛大臣との共同記者会見において、
 「日本の施政権下にある尖閣諸島には日米安保条約第五条が適用される」
と公言している。
 頭隠して尻隠さず、という感じだ。

 されば、今さら米国が日本の立場を積極的に支持しなくても、日本の立場は概ね確保されるということではないか。

■米中関係の進展

 それでは逆に、米中関係は今後ますます険悪化するのかと言うと、必ずしもそうではない。

 今回米中間では、陸軍同士の対話メカニズム(an army-to-army dialogue mechanism)とアジア太平洋安全保障対話(an Asia-Pacific security dialogue)の構築について、中身はともかく、一応合意したという。

 結構ではないか。
 どうやら米国は中国との対決が不可避であることを覚悟し始めたようだ。
 だからこそ、少しでも対話を続け、透明性を高めたいのだろう。

 その目的は、誤解や誤算によって生ずる可能性が極めて高い米中(または日中)間の軍事衝突を最小限にするための紛争回避メカニズムの構築である。

 今回のヘーゲル訪中は、そうした方向で米中両軍が動き始めたことを象徴する訪問と見るべきだろう。

宮家 邦彦 Kunihiko Miyake
1953年、神奈川県生まれ。東大法卒。在学中に中国語を学び、77年台湾師範大学語学留学。78年外務省入省。日米安全保障条約課長、中東アフリカ局参事官などを経て2005年退官。在北京大使館公使時代に広報文化を約3年半担当。現在、立命館大学客員教授、AOI外交政策研究所代表。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。


 いまアジアにおいて中国は脅威の存在になっており、
 その脅威は将来的にますます大きくなっていくだろう。
 中国のこの脅威は周辺諸国の手に負えるものではない。
 対抗できる力をもつ国があるとしたら、インドと日本しかいない。
 しかし、それはフィフテイ・フィフテイの対抗力ではない。
 明らかに中国の方が一段も二段も上にある。
 とすれば周辺国は中国の脅威に怯え、ひたすら「イエス」というしかない。
 もし、アジア諸国をそんな状況から救ってくれるものがあるとしたら、アメリカであろう。
 というよりアメリカしかない。
 よってアジア諸国は中国の顔色を伺いながらアメリカの動向を見定めている。
 そのアメリカはこれまで明らかに中国よりの姿勢を鮮明にしていた
 アジアをアメリカと中国で支配することに同意するかのように。
 もちろんアメリカにも言い分はあるだろう。
 しかし、そのように見えるということは、それなりの事実として認識せざるを得ない。
 そんなアメリカの卑屈な態度に希望を失ったのが周辺国ということになる。
 これにより、
 急激にアジア諸国のアメリカへの信頼性が揺らいでいる。
 この潮流をようように察知したのだが、一度揺らいだ信頼性はなかなか回復できない。
 というのは、いつまた
事が起こったとき本当にアメリカは信用できるのだろうか
という疑念を生じさせるからである。
 アメリカがいなくても何とかやっていく算段をつけよう、というのが今のアジア諸国の判断だろう。
 もしアメリカが手を差し伸べてくれるならそれはそれにこしたことはない。
 だが、その手を出してくれない可能性も大きくありえることだとしたら、その対応も視野に入れておかねばならない、というわけである。
 アジアにおけるアメリカはいまや信頼国から友好国に落ちつつある。
 ここにきて、それに気づいたアメリカはシャカリキにその信頼回復に努めようと動き出している。
 結果はどうなるのか、まだ先の話である。
 一度失った信頼はちょっとやそっとでは元には戻らない。


 WEDGE Infinity  2014年04月17日(Thu)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3748

相次ぐ米政府高官の対中強硬発言
南シナ海における米VS中

 2月25日付National Interest誌のサイトで、Robert Haddick米特殊作戦軍契約要員は、中国の東・南シナ海への進出について、米高官が最近、中国のさらなる進出を防ぐためレッドラインを設置することを示唆しているが、問題は、米国が十分な軍事力でそれをバックアップできるかである、と述べています。

 すなわち、米国はこれまで中国に対し自制の政策をとってきたが、その間中国は西沙・南沙諸島の一部を占拠し、東シナ海に防空識別圏を設置するなど、地域で着実に進出してきた。
 これに対し最近、メディロス米NSCアジア上級部長が、
★.中国の東シナ海防空識別圏設定は正統性がない、
★.南シナ海に同様な措置を取れば、地域での米国の軍事姿勢は変わるだろう、
と述べ、ラッセル国務次官補が、
★.米国政府当局者として初めて中国の「九点線」を拒否し、
★.グリナート米海軍作戦部長が、南シナ海でフィリピンが中国と紛争になれば米国はフィリピンを支援する、
とそれぞれ述べた。

 このような最近の米高官の対中強硬発言は、これまでの米の対中自制策の終わりを意味するものかも知れない。
 これまで米政府は中国を威嚇せず、歓迎の姿勢を示せば中国自身が過去30年間大きな恩恵を得てきた国際体制を受け入れるものと期待してきた。
 しかし、中国の2008年以来の行動を見ると、
 中国が米国の自制を米国の弱さ
と考えた可能性がある。
 中国が米国の期待した行動に出なかったので、米政府は中国により強く対処する必要があると考えるに至ったようである。

 しかし、もし米国が南シナ海にレッドラインを設置する場合、それをバックアップできるだろうか。

 2年以上前に発表された「アジア・リバランス」戦略も、海・空軍力の6割をアジア太平洋地域に配備するとの約束も、中国の小刻みながら着実な進出を抑止しなかった。
 シリアの例が示すように、相手方にレッドラインは突破できないと信じさせることができない限り、レッドラインは設置すべきでない。

 中国が南シナ海に防空識別圏を設定したら地域の米軍事力を一層強化するとのメディロスの約束はこけおどしになりかねない。
 米国には南シナ海地域に恒常的に配備する予備戦力がない。
 米国の地域の司令官の空母の通常配備に対する要請に応じるのに要する時間が6か月から8か月、あるいはそれ以上になることが予想されている。
 攻撃型潜水艦も同様の状況で、潜水艦隊が縮小されれば状況は悪化する。

 中国は20年にわたりミサイルと潜水艦を重視する軍の近代化を進め、西太平洋の米軍基地と戦艦に対する、地上発射ミサイル、航空機、潜水艦からなる戦力を急速に拡大し、接近拒否軍事戦略を進めている。
 これに対し米国の空・海軍力の中心は比較的レンジの短い航空機とミサイルで、この種の戦力の前方基地配備を増やしても、米軍の危険を増すのみで、中国の行動の抑止にはならない恐れがある。

 中国の接近拒否戦略に対抗する長距離攻撃力が不足しているので、米国はレッドラインをバックアップするのに今までにないリスクを取らなければならない。

 この状況が改善されるまで、米国の政策責任者は、米国の空・海軍力が強大であるとの評判を維持し、米国がやがて設置するレッドラインが挑戦されずに済むことを望む以外にない、と述べています。

* * *

 オバマ政権が、対中自制策を取れば中国も自制すると期待していたとすれば、それは希望的観測に過ぎなかったと言えます。
 最近の米政府高官の対中強硬発言は、中国の拡張戦略を直視し始めたことを意味する
ものと考えてよいでしょう。

 論説は、中国の南シナ海への進出に米国がレッドラインを設置しても、米国はそれをバックアップする戦力を持っていないのではないかと疑問を投げかけています。
 20年にわたる中国の海軍力の増強に対し、米国は長距離攻撃力が不足し、中国の行動を抑止できないのではないかと言っています。
 これはアジア太平洋地域、特に南シナ海において海軍力の軍事バランスがすでに中国に有利になっていることを示唆するものです。
 このような見方は検証を要しますが、米海軍力を過小評価しているとの感を抱かざるを得ません。

 なお、尖閣諸島については、米国政府は繰り返し日米安保条約が適用されると述べ、すでにレッドラインが設置されていると言って良いでしょう。

by  岡崎研究所



ニューズウイーク 2014年4月21日(月)12時51分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/04/post-3249.php

中国は超大国と張り合わず
How China Would Fight the U.S.
[2014年3月25日号掲載]
ハリー・カジアニス(ナショナル・インタレスト誌副編集長)

軍事大国を目指すより米軍の介入を防いで「核心的利益」を守る
──それが中国の思惑だ


●圧倒的兵力 中国の活発な海洋進出をにらみつつ、西太平洋上で監視活動を行う米海軍第7艦隊の空母打撃群 DECLAN BARNES-U.S. NAVY

 台湾の英字ニュースサイトに興味深い記事が載った。
 中国の軍備拡大とその現状と今後を検証した記事だ。
 「人民解放軍は高度な兵器システムを次々に導入しているが、世界最強の軍隊となり......米軍に対抗するには最低30年かかる」
と執筆者は推測している。

 米中の軍事力を比べるなら、陸海空軍の装備や兵力を詳細に比較検討する必要がある。
 だが、そんな比較に意味があるのか。
 中国が米軍に追い付こうとしていないのは明白だ。

 考えてみてほしい。
 現代の軍隊は何らかの目標を想定して編成される。
 中国の軍備増強の場合は、何らかの紛争に対する米軍の介入を想定したもの。
 いわゆる「接近阻止・領域拒否(A2AD)」である。
 中国は「情報化された条件下での局地戦争」で勝てるよう軍拡を進めているとも言われる。

 米軍の介入が予想されるケースは限られており、中国は航空機や船舶の保有数で米軍に対抗する必要はない。
 そして、少なくとも今のところは中国政府はこの状況に満足している。

 要するに、中国は軍備でアメリカと完全に肩を並べる必要はない。
 自国の「核心的利益」さえ守れればそれでいい。
 非対称的な備えで済むなら、中国にとってはそのほうが好都合だ。
 現に、中国が紛争を抱えているどの場所を見てもアメリカとの全面的な直接対決を想定した布陣は1つもない。

 例えば陸軍。
 中国が地上戦を戦うとすれば、相手はどこか。中央アジア諸国は中国には友好的で、差し迫った脅威ではなさそうだ。
 ロシアとの関係も至って良好。
 この2大国が争う確率はほぼゼロだ。
 実際、ロシアに対抗する必要がないからこそ、中国は安心して他方面の軍拡に資源を投入してきたのだ。

 中国は当面、国連の平和維持活動以外、外国に軍隊を派遣する気はなさそうだ。
 米軍と戦う気がないことは言うまでもない。
 差し迫った脅威がないのに、地上部隊に多額の予算を投じるのは資源の無駄だろう。
 確かに、地上戦に備えた軍備のハイテク化も進めているが、それほど急いでいる気配はない。

 ならば、海軍力はどうか。
 海上防衛こそまさしく中国が注力してきた分野だ。
 南シナ海に目をやれば、中国と領有権問題で対峙している国々は(台湾を除いて)、軍備では中国に到底かなわない。
 例えばフィリピン海軍が保有するのはせいぜい米沿岸警備隊の払い下げ船。
 中国の最新鋭の駆逐艦や地上配備型ミサイルには歯が立たない。

■的を絞って目標を達成

 だが、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を争う日本は別だ。
 日本の海上自衛隊はアジア最強クラス。
 戦闘スキル、訓練、兵器の技術水準から日中の海軍力を比べるなら、日本に軍配が上がる。

 しかし中国のミサイル保有数と精度の向上、新型の対艦弾道ミサイル(ASBM)の導入を考慮すると、
 ミサイル戦になった場合は予断を許さない。
 中国は第5世代戦闘機の導入と艦船の保有数増加に的を絞って国防費を増やしているから、将来的には日本は海軍力で中国に優位を保つことが困難になるだろう。

 そこで問題になるのが大物同士の力比べだ。
 米中の軍備比較が無意味だとは言わない。
 だが、東シナ海の今後を考えるなら、見落としてはならない事実がある。
 中国は軍備でアメリカに拮抗する必要がないということだ。

 少なくとも今のところ中国は「第1列島線」周辺の防衛にはるかに強い関心を持っている。
 片や、アメリカは地球規模で超大国の責務を果たそうとしている。
 2国の軍隊のミッションはまったく違うのだ。

 だからこそ、盛んに論じられている中国の戦略、つまり米軍の介入に対抗するA2ADが重要なのだ。
 周辺海域で紛争が起きたときに、介入してくる米軍を無力化すること。
 それが中国の狙いだ。

 多数の船から成る攻撃部隊、空母打撃群を複数保有するには膨大なコストが掛かるが、その必要はない。
 巡洋艦と弾道ミサイル、従来型の潜水艦、機雷、その他比較的低コストの兵器が多数あれば、目的を果たせる。中国にとってはそれで十分だ。

 2つの国の軍事力を正確に比べるのはそう簡単ではない。
 だが、ある国の軍隊の能力を判定するのは簡単だ。
 その国の指導層が掲げる目標、そして軍隊自体が設定した目標を達成できるかどうか──それだけだ。

 残念ながら、それを論じても読者の興味をかき立てる記事にはならない。
 それでも、現在と今後の中国の軍事力で重要なのは目標達成能力のほうだ。
 

From the-diplomat.com



【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】



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