2014年4月3日木曜日

軍幹部「習近平主席への忠誠」誓う文章を同時発表:「まあ、とりあえず誓詞でも出しておこう」 

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 ということは内心「習近平主席への忠誠」を嫌がる軍人が多々いるということになる。
 軍部の締め付けということにもなるが、なぜか虚しい気分になる。
 解放軍は相当に共産党から離れているのかもしれない。
 そして
 「まあ、とりあえず誓詞でも出しておこう」 
といった雰囲気が濃厚に伝わってくる。

 昔、豊臣秀吉が死期が近づき床にあったとき、めったやたらと諸国の有力大名から誓詞を差し出させたという歴史を思い浮かべる。
 いまの中国がこれに似ている。
 先日は、世界各国に駐在している外交大使ほぼ全員から反日文書を発表させた。
 やることがいかにもマンガチックだったが、あまりの出来すぎに辟易した。
 今度は軍部からっ誓詞をとっている。

 習近平の基盤がそうとう脆く、その補強にやっきになっているといった風に見える。
 ということは、何か大きな事が起こると反転して雪崩的に
 習近平一派が粛清の対象
になることもありえる、ということでもある。
 いまは権力を保持しているが、こんなことを見せつけられるとどうも中国共産党内部の抗争が激しくなっているように思ってしまう。
 あるいは、習近平は解放軍の傀儡であって、いまだ権力を掌握できずに焦っているようにも見える。


サーチナニュース 2014-04-02 18:03
http://news.searchina.net/id/1528766

軍幹部17人が「習近平主席への忠誠」誓う文章を同時発表=中国

 中国の中央軍事委員会機関紙の解放軍報は2日付で、七大軍区や海軍、空軍、ミサイル部隊の第二砲兵隊の司令官など17人の署名による文章を掲載した。
 いずれも、習近平主席の軍に対する指示を「貫徹する」などと表明した内容で、習主席を中心とした軍の結束を誇示するものだ。

 解放軍報は2日付の第6面をすべて使って、軍幹部17人の文章を掲載した。
 中国人民解放軍の母体は陸軍であり、全国を七大軍区にわけ、それぞれの地域の国防を担当させていている。
 さらに、海軍や空軍、核を含む戦略ミサイル部隊である第二砲兵が加わった経緯がある。
 最近では、海軍の増強と発言力の向上が目立つ。

  文章を寄せた軍幹部の地位については、空軍と陸軍七大幹部がすべて「司令員(司令官)で、海軍と第二砲兵は副司令員だった。
 その他、軍事関係の教育機関や、準軍事組織である武装警察部隊の責任者による文章が掲載された。
 いずれの文章も、習近平主席の指示の「貫徹」を強調したものだ。   
●.中央軍事委員の馬暁天空軍司令員による「空軍部隊の戦闘、勝利能力の向上に努力」に続き、
●.瀋陽軍区の王教成司令員による「真の戦闘力標準を打ち建てて実現」、
●.北京軍区の張仕波司令員による「部隊建設の法治レベルの引き上げに力入れる」、
●.蘭州軍区の劉〓軍司令員による「新情勢下の西北方面の国境防衛作業を掌握せよ」、
●.済南軍区の趙宗岐司令員による「改革を深めることで強軍という目標の実現を押し進めよ」、
●.南京軍区の蔡英挺司令員による「指導幹部の4種の思考能力を高めよ」、
●.広州軍区の徐粉林司令員による「戦闘力標準の実戦要求を把握せよ」、
●.成都軍区の李作成司令員による「軍事闘争の準備を不断に開拓し深めよ」
の順で掲載した。
 (〓は「奥」に似た外見の文字。上部は「白」の内部を「米」に変え、下部は「号」の「口」を取り去った形と同じ)

 海軍では、
●.田中副司令員による「海洋強国建設のために、戦略の支えを提供せよ」、
●.第二砲兵は王久栄副司令員による「戦略ミサイル部隊の建設を奮闘・推進せよ」、
●.乙暁光総参謀助理(参謀総長助手)による「軍民融合を深めることをしっかりと推進せよ」、
●.総政治部は呉昌徳副主任による「党による軍の絶対的指導はいささかたりとも動揺しない」、
●.総後勤部の孫黄田副部長による「厳格に規則と法にもとづき金銭を使い事を進めることが必須」、
●.総装備部の王家勝副政治委員による「イデオロギー工作をしっかりと掘り下げよ」
を掲載。

  さらに、
●.軍事科学学院の劉成軍院長による「中国の特色ある新型の軍事データベースを建設せよ」、
●.国防大学校の宋普選校長による「改革の深化という強大な思想武器を把握せよ」、
●.国防科技技術大学校の楊学軍校長による「わが軍の強軍への家庭の飛躍的発展を進めよ」、
●.武装警察部隊の王建平司令員による「強軍という目的のため、武装蛍雪部隊を統率して建設」
を掲載した。
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 ◆解説◆
  中国には、中国共産党内の組織としての中央軍事委員会と国家の機関としての中央軍事委員会がある。
 共産党中央軍事委員会の前身である中国共産党中央軍事運動委員会は1925年に設立された。
 国家機関としての中央軍事委員会は1983年に設立された。
  中国軍には、「共産党の軍」として設立された歴史的経緯がある。
 「国軍ではなく党の軍」という、近代国家として異例の存在
であることを問題視する声もあったことから、1980年代になり国家機関としての「中央軍事委員会」が設立されたとされる。
 しかし、党、国家の軍事委員会は幹部人事もほぼ同じであり、「同じ組織が2つの看板を持っている」状態と考えてよい。
   中国政府には国防部という組織もある。
 国防部は軍を管理運営するための人事、教育、医療は法務などの行政活動のための組織であり、軍の作戦行動については中央軍事委員会の職務となる。

 ただし、国防部が主宰する記者会見では、軍事全面についての説明や質疑応答がなされる。
  中国では
★.共産党トップの総書記、
★.党と国家の中央軍事委員会主席、
★.国家の最高責任者である国家主席
を同一の人物が兼任することが慣例になった。
 現在は習近平氏だ。
 軍事関係の文章や報道など各種発表で
 「主席」の言葉が使われる場合、「国家主席」ではなく「中央軍事委員会主席」のニュアンスを示すと考えてよい。



 WEDGE Infinity  2014年03月31日(Mon) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3725

中国の軍改革 習近平の本気度は?

 中国の国防費の増加が止まらない。
 3月13日、中国全国人民代表大会が閉幕した。
 今年の全人代に合わせて公表された2014年の中国国防予算は、前年実績比12.2%増の8082億3000万元(約13兆4400億円)で、4年連続の2桁の伸びとなった。
 中国国防費の急速な伸びは、周辺諸国が中国の軍事的意図に対して警戒感を有する理由の一つとなっている。

■習近平自ら「党中央と中央軍事委に従え」

 さらに、人民解放軍の改革を進める意志が明確にされた。
 全人代閉幕後の15日に開かれた第一回「中央軍事委国防・軍隊改革深化指導小組」である。
 トップである組長は習近平国家主席だ。
 習主席は講話の中で、
 「思想・行動を党中央と中央軍事委の決定や指示に統一させ、強軍目標を掲げて改革を推進せよ」
と強調した。
 主席自ら「党中央と中央軍事委に従え」と強調しなければならなかったのは、実際にはそうではないことを示唆している。

 そして、今回の全人代では、空軍が元気だったと聞く。
 会議後の記者のぶら下がり取材に対して積極的に答え、威勢の良い発言を繰り返したのだ。
 海軍も勢いがあったが、空軍の勢いはそれ以上だった。
 これは、これまで見られなかった光景だ。

 2桁の国防費増加を見せ、習近平主席への集権化を加速して改革を進め、海空軍が自らの主張を積極的に公にする。
 こうした動きは、一見、中国が対外的な軍事力行使を近い将来に企図しているかのようだ。
 実際のところ、中国人民解放軍に何が起こっているというのだろうか。
 習近平主席は、人民解放軍をどうしたいと思っているのか。
 米軍の4年ごとの戦略見直しであるQDR2014でも、中国軍が近代化を進める意図について懸念を示している。

■改革推進の担い手は政府から党へ

 閉幕したばかりの中国全人代は、予算を含む指導部の政策を承認するのが主たる仕事である。
 この場で新たな国家戦略や方針が示される訳ではないが、中国指導部が、どのような政策を用いて国家戦略を具現化するのかを見る良い機会ではある。

 一方で、国家戦略を決めるのは5年に一度開催される党大会である。
 中国が進むべき方向を決めるのは政府の役割ではないのだ。
 2013年11月に開かれた中国共産党全国代表大会(18期三中全会)は、「改革」を強調するものだった。
 閉幕当日の11月12日には、「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する党中央の決定」を採択し、同日夕刻に発表された公報(コミュニケ)では「全面深化改革領導小組」と「国家安全委員会」の設置が明らかにされた。
 二つの新組織のトップは、習近平主席である。

 これまでも、改革を進める組織として「国家発展改革委員会」が、中国の政府である国務院に存在していた。
 しかし、三中全会で新たに改革推進の組織を設立したということは、改革推進の担い手を、政府から党に移したことを意味する。

■制度よりも意識の改革

 今回の全人代でも習近平主席の存在が目立った。
 政権発足当時の多くの予想と異なり、
現在の李国強首相の影は非常に薄い。
 習近平主席が自らへの集権化を進めることに対して、中国国内でも、毛沢東時代への回帰を想起して、警戒感を示す見方もある。
 しかし、一方で、これこそが中国の改革の進め方だという意見もある。
 では、習近平主席が進めようとする改革とはどのようなものなのだろうか。

 習近平政権が「改革」を強調しているにもかかわらず、今回の全人代でも、具体的な組織改革や制度改革は見られなかった。
 中国は、現段階で、大きく制度を変える意図はないのだ。
 現在、中国が強調している「改革」は、制度の変更によるものではなく、人々の意識改革に近いもののように見える。

 習近平体制になってから、中国の公務員は非常に忙しくなったという。
 これまで、中国の公務員は仕事をしないことで有名であったから、真面目に仕事をするようになったということかも知れない。
 彼らの多くは、自ら真面目に働こうと思った訳ではないだろう。
 強制されているのだ。
 これこそ、習近平主席が進める「改革」だと言える。
 これに対して、これまでも真剣に仕事に取り組んできた政府職員等は喝采を送っている。

 「反腐敗」を展開し、贅沢な食事の禁止等を含む政府機関の無駄遣い排除を進めるのは、「改革」の一部であると言える。
 その他にも、これまでご褒美的な意味もあった幹部の海外出張も、日数が制限される等の規制が加えられている。
 また、彼らに対する集団教育も復活した。

 こうした意識改革を進めるために、これまでの制度の上に新たな組織を設置したのだと言える。

■腐敗はびこる軍も改革を 戦える軍隊に

 人民解放軍改革の主たる目的も、腐敗撲滅であるという。
 中国では、軍の腐敗は有名な話だ。
 中国メディアは、中国人民解放軍総後勤部の谷俊山元副部長(中将)が汚職容疑で失脚して2年経った2014年1月14日、同氏の実家で行われた家宅捜索の様子を報じている。
 同氏の汚職は、元中央軍事委員会副主席の徐才厚の失脚にもつながっているとされる巨額汚職事件だ。

 後勤部は、基地や軍人の住居の建設並びに装備品の調達等にも関わるため、汚職がはびこりやすい。
 中国でも、不動産はお金になるのだ。
 総後勤部の汚職に代表される軍の腐敗は、国防予算の非効率的使用につながっている。
 例えば、人民解放軍では、2000年代初めから、下士官用宿舎の不足が取り沙汰されている。
 それが、2013年になっても、まだ、問題として報道されているのだ。

 宿舎不足の原因は、後勤部による土地売買に係る不正だけではない。
 出来上がった宿舎を将校が不正利用していることを問題視する「下士官用宿舎は下士官に」という見出しの報道もある。
 いくら予算をつぎ込んでも、予算を執行する側に腐敗があれば、目的を達成できないということだ。

 また、常識的に考えても、汚職によって蓄財に精を出す将校が率いる軍隊が、まともに戦えるとは思えない。
 また、どこの軍隊でも、兵隊は自分たちの指揮官のことをよく見ているものだ。
 ここに、習近平主席の危機感がある。
 昨年発表された「中国国防白書」の中で、これまでの「軍隊建設」から「戦争準備」へと力点を移したのは、
 「綱紀粛正によって戦える軍隊にしろ」
という意味を含むのだ。
 このために、軍の上に新設されたのが、先に述べた「中央軍事委国防・軍隊改革深化指導小組」である。
 公務員に対する成果と同様、軍人も外食をしなくなった。
 「危なくてできない」という。

 こうした「意識改革」は、下部の抵抗を抑える指導者の強権によって初めて実行できるというわけだ。

■政治将校制度が及ぼす非効率性と悪影響

 しかし、軍運用の効率化は、意識改革だけに止まらない。
 もう一つ検討されているのが、政治将校制度だ。
 共産党の軍である中国人民解放軍にとって、 
 末端部隊まで配置された党組織と政治将校は、党中央の意図を末端まで行き届かせる神経のようなものである。
 これまでの
 中国指導者は、軍の武力を恐れるが故に、末端まで自らの意志に従うよう監視していた
とも言える。

 しかし、政治将校制度は人的にも装備的にも時間的にも壮大な無駄遣いだ。
 さらに、不必要に意思決定に時間を要し、時に指揮系統を混乱させる。
 政治将校制度が及ぼす非効率性と悪影響は、中国指導者にもよく理解されている。

 習近平主席は、末端部隊に限り、政治将校制度を廃止する方向で検討しているというのだ。

 末端部隊とは言え、政治将校をなくすためには、相当の自信と覚悟が必要だろう。
 このためにも、習近平主席は、自らに権力を集中させる必要があるのだろう。

 習近平体制が進めようとするのは一種の賢人政治である。
 また、自らが清廉でなければならない。
 ハーバード大学留学中の娘を呼び戻したのは、米国に人質を出さないという意味の他に、他の高級幹部に対する手本を示す意味もあったろう。

 それでも、国内に不満は残る。
 全人代で空軍が元気だったのは、最近数年間、空軍の不満の原因であった予算配分に、何らかの考慮がなされたからかもしれない。
 中国指導部は、綱紀粛正を進める先に制度改革も見据えるが、
 各軍や各利益団体の不満を考慮しつつ進める「改革」の道のりははるかに遠い。

小原凡司(おはら・ぼんじ) 東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官
1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。




【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】




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