2014年4月13日日曜日

中国の経済改革を「信用」する理由:そういう言説が飛び交うほどに危機が訪れていうことか?

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レコードチャイナ 配信日時:2014年4月13日 15時27分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86457&type=0

中国経済が減速の時期に、今後5年間は7-8%の成長率で推移―中国紙


●11日、中国の専門家は中国経済が減速の時期に入り、今後5年間は7-8%の成長率で推移すると予測している。写真は広州の住宅展示場。

 2014年4月11日、人民日報(電子版)によると、ボアオ・アジアフォーラム副理事長の曾培炎(ズン・ペイイエン)氏は9日、ボアオ・アジアフォーラム2014年度年次総会のサブフォーラム「アジア経済展望2014:ボアオ・アジアフォーラムの理事との対話」に出席した際に、
 「中国経済はスローダウンの時期に入っている。
 今後5年間の7-8%の経済成長の実現は問題ない。
 現時点で不動産業界が転換点に差し掛かったと判断するのは時期尚早だ。
 ただ、一部地域には不動産バブルの潜在的なリスクがある
と発言した。

 曾氏は現在の中国の経済情勢について、
 「年初のマクロ経済データがやや低下し、1-3月のPMIは50を下回った。
 投資を見ると、全国固定資産投資、特に実際の投資額の増加率は前年同期比で大幅に低下した。
 その主因となっているのは、地方債の抑制、余剰生産能力を抱える業界への投資の制限、企業の在庫消化、不動産市場の変動だ。
 耐久消費財の需要は飽和に近づいており、国民の消費アップグレードを促す家事代行、健康、高齢者サービスなどのサービスおよびハイエンド商品の供給が不足しており、消費の需要拡大の原動力が弱い。
 対外貿易を見ると、第1四半期の輸出額は前年同期比でやや減少した。
 これは前年同期の輸出が好調で、人民元相場が高騰したためだ。
 しかし実情を見ると、データほどの疲弊は見られない。
 欧米経済の好転に伴い、海外貿易の情勢が回復するとみられる
と分析した。

 曾氏は、
 「30数年間の高度成長を経て、中国経済はスローダウンの時期に入った
 経済の主要任務はモデルチェンジ・アップグレード・構造調整で、
 中国経済がかつてのように2桁台の高度成長を維持できるとは期待できない。
 しかし中国経済は依然として活力を維持し、
 今後5年間は7-8%の経済成長に期待できる。
 中国にとって今年は改革の年となる。
 特に経済・財政・税制改革といった国家措置の施行は、中国経済の発展をさらに刺激するだろう。
 中国経済は現在も発展のチャンスが満ちた段階であり、活力がまだ存在している。
 今後5年間は7-8%のペースで発展するとみられ、このペースは問題ではない
と予想した。 

 中国の不動産市場については、
 「中国の不動産の動向には分化が生じている。
 大都市の不動産価格の上昇幅が狭められており、緩やかになりつつある。
 中小都市の不動産価格の上昇率が低下しており、一部の都市では下落を始めている。
 価格動向の分化は政府の行政的な手段による干渉や調整と関連している。
 他にも世界のホットマネーが流出し、住民の投資目的の不動産購入が減少していることも一因だ」
と述べた。

 また、
 「客観的に見て、不動産業界は近年、一部の都市でバブルを蓄積した
 住宅価格は国民の消費能力を大幅に上回り、一部地域では不動産バブルの潜在的なリスクがある。
 全体的に見て、中国の土地には限りがあり、人口が多いと言える。
 都市化の発展に伴い、硬直的需要が生まれる。
 ゆえに不動産価格は現在、一時的に上昇率が低下するという状況を迎えているが、不動産業界はより理性のある発展をしていくだろう」
と語った。

(提供/人民網日本語版・翻訳/YF・編集/TF)



レコードチャイナ 2014年 04月 12日 12:56 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA3B01020140412

コラム:中国の経済改革を「信用」する理由=ブレマー氏

 過去数週間、中国大手ネット企業の新規株式公開(IPO)に関するニュースが相次いだ。
 電子商取引会社大手のアリババと京東商城(JDドット・コム)、そして中国版ツイッターと呼ばれる微博(ウェイボー)だ。

 いずれも米国での株式上場を計画しているが、そうすることで彼らは高い流動性へのアクセスを手にするとともに、自国での規制を回避できる。
 中国には、利益を出していない企業にはIPOが認められないなどの規制がある。

 世界の投資家がこうした中国企業のIPOに興奮するのは無理からぬことだ。
 中国の消費者市場は急速に成長しており、電子商取引は恐らく最も期待できる分野だからだ。
 2013年1─9月に中国で配達された小包の数は60億個に上る。前年同期比で実に61.2%の増加だが、こうした小包の半分が、オンラインショッピングによるものだ。

 習近平国家主席が進める改革は、野心的かつ前例のないものであり、中国の経済成長エンジンを旧来の国家主導型から、デジタル時代の中流消費者がけん引する新たなモデルに変えようとしている。

 こうした経済改革が成功すれば、内需拡大とネットを積極活用する中流層の増加から恩恵を受けるIT企業には、大きなチャンスの扉が開くことになる。

 ただ一方で、経済改革をめぐって発せられる危険信号が、潜在的投資家に二の足を踏ませているのも事実だ。
 われわれは最近、中国人富裕層が国外に脱出しているのを目の当たりにしている。
 指導部の中には、習主席が推し進める汚職撲滅運動は行き過ぎであり、派閥内に亀裂を生みかねないとの懸念もある。
 また投資家は、経済成長の停滞にも不安を抱いており、これまで二桁だった成長率が
 「新たな前提」である7%台に減速することで、
 中国指導部が改革から旧来型の景気刺激策に回帰する
との疑念もある。

 しかしながら、こうした状況を考慮してもなお、経済改革のアジェンダが順調に進むと考える理由は十分にある。
 まず最初に注目すべきは、中国エリート層の国外脱出の動きだ。最近の統計によると、純資産1000万元(約1億6000万円)以上を持つ同国の最富裕層のうち、すでに海外に移住した人や移住を検討している人の割合は64%に上る。
 2013年には、この数字は60%だった。
 こうした富裕層の国外脱出は、経済改革が成功しつつあることのサインだ
 なぜなら、経済開放や汚職対策が多くの既得権益層を脅かしているからこそ、彼らに海外での資産保護を急がせているからだ。

 ただ中国の富裕層は、国外脱出の動きを強めているものの、自国経済の見通しには強気だ。
 景気の先行きに極めて自信を持っているという富裕者の数は、過去5年で初めて前年を上回っている。

 習主席の汚職撲滅運動が共産党指導部の間で激しい反発を誘発し、経済改革プロセスの勢いをそぐ可能性はある。
 江沢民元国家主席は最近、「この汚職撲滅運動の足跡が大きくなり過ぎることはない」と公言したが、胡錦濤前国家主席もこうした意見に同調し、汚職撲滅運動は行き過ぎるべきではないと警告した。

 しかし、明るい展望が持てるのは、彼らが異議を唱え始める1年も前から、習近平氏が有力者たちと戦ってきたことだ。
 習氏の汚職撲滅は見せかけだけではなく、実際に影響を与えている。
 そして、こうした政治基盤の安定化は、習政権の経済開放に向けた推進力とも密接に関係し合う。

 中国の経済成長鈍化で、投資家は共産党指導部が旧来型の景気刺激策に回帰するとの懸念を抱くが、習主席は引き続き改革のアジェンダにコミットしており、改革の見返りに国家主導型経済成長の一部を犠牲にする姿勢も見せている。

 短期的には、引き続き政府主導の景気刺激策を目にするだろうが、主としてそれは改革を前進させる分野を対象にしたものになるだろう。
 例えば、国内投資の減速に伴い、中国政府は、これまでは聖域とされていた分野でも、新たに民間や外資による投資を解禁する可能性が高い。
 上海自由貿易試験区がいい例だ。

 中国政府はまた、産業ごとに投資の優先順位を決めるだろう。
 省エネや最先端ITなど新たな経済成長の局面に関係が強い分野に重点を置く一方、鉄鋼やアルミなど過去の国策で肥大化した分野への投資は減らはずだ。

 長期的には、中国の経済改革の道のりは前途多難であり、政治的には予測不可能だ。
 中国の国家資本主義モデルは当面は支配的な経済力であり続けるだろうが、景気減速が一段と深刻になれば、習主席の改革アジェンダは後退するかもしれない。
 自分たちの影響力低下に危機感を持った政界上層部からの批判が強まる可能性もある。

 中国経済の成長軌道は依然として不透明なままであり、その答えは恐らく、唯一最大の要因である
 「世界経済がどこに向かっているのか
に集約される。

 しかし現時点では、いくつかの危険信号はあるにせよ、習主席は引き続き、政治的抵抗に対する最善の防御は良い攻撃だと信じており、改革に関して言えば、最善の策は妥協ではないと確信している。
 消費主導型の中国経済から恩恵を受けたい投資家や企業にとって、こうした習主席の楽観は共有する価値があると言えるかもしれない。

[10日 ロイター] - 国際政治学者イアン・ブレマー
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End oftheFreeMarket」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。



レコードチャイナ 配信日時:2014年4月15日 17時13分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86595&type=0

中国経済崩壊の可能性はない=借金は「消費」ではなく「投資」に使われている―英銀行CEO


●14日、中国の債務残高の対GDP比が高くなっており、中国の先行きを悲観する人はこれを、「中国が間もなく崩壊する証拠」としている。写真は鉄道網のひとつ、南京駅。

2014年4月14日、中国の債務残高の対GDP比が高くなっており、中国の先行きを悲観視する人はこれを、中国が間もなく崩壊する証拠としている。彼らは余剰生産能力、過度なインフラ整備、銀行間市場の資金不足、人民元相場の下落を、中国経済の崩壊が間近であることを示す危険信号としている。人民日報が伝えた。(文:ピーター・サンズ、スタンダードチャータード銀行CEO)

中国経済が崩壊するという結論を急ぐならば間違いだ。中国と欧米の債務問題との間には重要な差があり、イコールで結ぶことはできない。

まず、中国は多くの負債を抱えているが、貯蓄も多い。ゆえに中国は基本的に、自分で自分から資金を借りている状態なのだ。これは外国の債権者に依存する状況と大きく異なっている。

次に、債務拡大の主な推進力は企業であって、消費者ではない。中国の一部企業は多くの資金を確保してから、これを銀行やシャドーバンクに戻す。それからこの両者が、その他の企業に融資している。効果的な資源配分ではないが、これは系統的な過度の債務ではなく、資本市場の欠陥を示すものだ。

さらに、中国の借金の主な目的は、投資のための資金調達だ。欧米のように借金をして消費をするならば、パーティーの終了後、人々はほぼ何も手にできなくなる。しかし借金をして投資を行うならば、インフラ整備の大規模なプロジェクトを手にすることができる。例えば中国の高速鉄道網、世界レベルの生産設備などだ。

最後に、中国政府と指導部は中国に存在する問題を理解しており、これを解決しようとしている。

中国にとって、債務問題の解決は金融システムに対する抜本的な改革の一環にすぎない。全面的な改革には、金利の制限の緩和、資本市場の発展、地方政府の財政改革などが含まれる。

脱レバレッジと同時に、経済成長を適度に抑制するには、高度なテクニックが必要だ。中国の金融システムの運営を徹底的に変えるのは非常に困難な任務だが、監督管理機関および政府部門は、現在に至るまで非常に着実な歩みを維持している。

中国の経済成長の構造には変化が始まっているが、その根本的な原動力は依然として力強い。都市化はなおも急ピッチで進められており、国内消費、特にサービス消費が急成長している。サービス業には余剰生産能力という現象が存在しないため、十分な発展の空間と大きな雇用チャンスがある。ゆえに先の道にはさまざまな障害があるが、多くの西側諸国の観測筋が指摘するのと比べ、中国が活路を見出し、これらの課題を克服する可能性は高いといえる。

(提供/人民網日本語版・翻訳/YF・編集/武藤)


 「中国の経済改革を「信用」する理由」とか
 「中国経済崩壊の可能性はない」
といったことがまじめに外国デイアで論じられるようになってきている
 あの2,3年前の輝きに満ちていた未来を賞賛する論調はどこに消えていったのだろう。
 未来を美しく飾る言葉はどこにも見かけなくなった。
 あるのは
 「大丈夫、大丈夫、中国は大丈夫!」
といった励ましとも悲痛とも聞こえる叫びである。
 大丈夫だとしても、これまでのような輝かしい未来は期待できないことだけは確かである。
 なにしろ背後からは生態系環境汚染の危機がヒタヒタと近づいてきており、一部は飲み込まれている。
 それだ見てみても、将来が明るい希望を提供するには力不足に陥っている
 
 未来の進路は3つある。
 ひとつはものの数年前のように輝かしい躍進が見込まれる経済に戻ることである。
 2つ目は今の状態を何としても維持していくことである。
 3つ目は徐々に減退していき、いわゆる中所得国家の罠に陥る可能性がである。
 まず最初のものはありえない。
 現政権がシャカリキに宣伝しているのが二番目である。
 成長率「7.5%」を絶対に維持するということである。
 このことは何を意味するのか。
 現況の経済はそのレベルを落ち込みつつある、ということを認めていることである。
 それがゆえに、7.5%という目標が絶対死守として浮上してくるのである。
 当局はこの数字を守るためにいろいろな手段を使うだろう。
 もっとも安易な方法は財政融資である。
 お金をばらまく方法である。
 これで数字的にあるいは表面的には維持できる。
 しかし、現実は悪くなっていくことを知っている。
 共産党は経済の好調を維持できるということでその正統性を民衆に与えられている。
 もし経済が悪くなれば共産党は賞味期限切れになる。
 つまり「ハイ、それまでよ!」となる。
 このことはだれよりも共産党自身がよく理解している。
 経済は生き物である。
 数字的操作をして成長率を維持したとしても、生活がそれを認めないなら共産党は危うくなる。
 そのことを理解している習近平は次の手を打ってきている。
 経済が悪くなった時の社会民衆不満の抑えこみに対する政策である。
 つまり、情報規制や思想教育の徹底などである。
 横からみればそれは習近平の独裁権力の増強に見える。
 しかし、おそらくそれは
 近いうちに発生するであろう経済停滞によって発生する危機にたいする予防策
と見たほうがわかりやすい。
 経済が好調なら権力維持に邁進することはない。
 中国国内でマイナス要因が大きくなりつつあるという信号とみたほうがいいように思われる。


レコードチャイナ 配信日時:2014年4月18日 7時50分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86588&type=0

中国経済崩壊論は「荒唐無稽」、目先の動向ではなく長期的な視点で見るべき―仏メディア


●14日、仏華字メディア・欧州時報(電子版)は「中国経済崩壊論は荒唐無稽」と題した記事を掲載した。写真は上海。

 2014年4月14日、仏華字メディア・欧州時報(電子版)は
 「中国経済崩壊論は荒唐無稽」
と題した記事を掲載した。

 税関当局の統計データによると、中国の2014年第1四半期の輸出入額は、前年同期比3.7%減の5兆9000億元(約96兆5000億円)となった。
 輸出入共に減少したことで、中国経済崩壊論者を勢いづかせたが、この程度の雑音では中国経済の成長は止められない。

 中国経済は急速な発展期間を過ぎ、現在は緩やかな下降線をたどっている。
 とはいえ、GDP(国内総生産)成長率は7%を超えており、先進国はもちろんのこと、BRICS各国を上回る成長を続けている。

 李克強(リー・カーチアン)首相が、
 「中国は中長期の健康的な発展を重視している。国民の生活を向上させることで内需を拡大し、経済成長をけん引する」
と話しているように、中国経済を見る場合目先の動向に左右されるのではなく、中長期的な視点で見るべきだ。




ロイター 2014年 04月 12日 09:51 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA3B00C20140412

アングル:中国の「太子党ファンド」、著名投資家引きつけるコネと実力


●4月10日、中国は世界で最も大規模な新興プライベートエクイティ市場だが、「太子党」と呼ばれる政府高官の子息が経営する投資ファンドは、高いリターンを得ようとする投資家たちを引きつけている。写真は香港に拠点を置く投資会社「博裕投資顧問(BoyuCapital)」のロゴ。昨年12月撮影(2014年 ロイター/Tyrone Siu)

[香港 10日 ロイター] -
 中国は世界で最も大規模な新興プライベートエクイティ市場だが、「太子党」と呼ばれる政府高官の子息が経営する投資ファンドは、高いリターンを得ようとする投資家たちを引きつけている。
 江沢民元国家主席の孫である江志成氏(28歳)も、そんな太子党のひとりだ。

 香港に拠点を置く投資会社「博裕投資顧問(BoyuCapital)」の共同設立者である江氏は、利益を生み出す取引を成功させる才能の持ち主。
 同社には香港の富豪、李嘉誠氏やシンガポール政府の投資機関テマセク・ホールディングスなども注目する。

 2010年に設立された博裕投資顧問は過去1年半の間に、2つの中国企業の新規株式公開(IPO)に関わり、莫大(ばくだい)な富を手に入れようとしている。
 1つは電子商取引会社アリババ・グループ・ホールディングス。
 そしてもう1つは、不良債権処理会社の中国信達資産管理だ。
 比較的新しい中国特化ファンドがこうした注目案件の双方に関わった例はほかにない。

 博裕投資顧問は経験豊富な経営陣をそろえ、中国のプライベートエクイティファンドのなかで最も影響力のある1つとみられているが、複数の投資家によると、アリババと中国信達資産管理の案件だけが、投資家たちを引きつける理由ではない。

 投資家たちは、博裕投資顧問が2011年に日上免税行の経営支配権を取得したことに強い印象を受けている。
 日上免税行は上海や北京の国際空港にある免税店すべてを運営している。
 この一件で投資家たちは、江氏が厳しく規制された国有セクターにコネを持ち、高いリターンは望める投資先へと変えてくれると信じるようになった。

 江氏が個人的なコネを使っているかどうかは明らかではない。
 祖父の江沢民氏が日上免税行や他の案件で助け舟を出したという証拠はない。
 それでも、投資家たちは江志成氏が家族のコネを利用していると信じてやまない。

 江志成氏と博裕投資顧問はこの記事について、コメントを差し控えた。

■<太子党の影響力>

 中国共産党の支配は同国経済や社会のほぼすべての側面に及んでおり、太子党が富を蓄えるために自身の政治的なつながりを利用することは難しいことではない。

 太子党は金融、エネルギー、国内の治安、通信、メディアに関わる事業で中心的な役割を果たしてきた。
 その性質から不透明になりがちな取引を扱うプライベートエクイティが、彼らにとってそもそも安全な分野だった。

 ロイターが確認したところによると、中国のプライベートエクイティ会社のうち、
 15社は太子党が設立したか、もしくは幹部を務めている。
 こうしたプライベートエクイティ会社によるファンドは1999年以降、少なくとも175億ドルの資金を調達している。

 事情に詳しい3人の関係筋によれば、博裕投資顧問は2011年の中ごろ、日上免税行の株式40%を約8000万ドルで取得することに合意。
 残り60%の保有者は明らかにされていないが、博裕投資顧問は投資家たちに日上免税行の経営支配権を取得したと話したという。

 2人の関係筋の話では、2013年初めまでに博裕投資顧問は、日上免税行の価値を約8億ドルと評価。
 博裕投資顧問は3年で莫大な含み益を手にした可能性がある。
 また関係筋によると、博裕投資顧問はすでに、日上免税行への投資分の大半を配当の受け取りで取り戻したという。

 江志成氏の友人らによれば、日上免税行を築き、博裕投資顧問に売却したのは、江一族と近しい中国系米国人のフレッド・キアン氏という人物。キアン氏は日上免税行を1999年に設立している。

 この年、当時の江沢民国家主席のもと、中国政府は新しい上海浦東国際空港に入る免税店の入札で外国企業にも門戸を開いた。
 上海は江沢民氏の政治的な権力基盤でもある。

 日上免税行の業績は急成長している。ロイターが確認した同社資料によると、2012年の売上高は10億8000万ドル。
 免税店など流通業界の動向を追うムーディーリポートは、日上免税行を、国有企業の中国免税品(集団)有限責任公司の次にランク付けしている。

■<2つの投資案件>

 博裕投資顧問が注目度の高く、高リターンな投資案件でその影響力を発揮するとの名声を確立した2つの案件がある。
 江志成氏はその両方で交渉役を担った。

 2012年、アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は江氏と向かい合っていた。
 博裕投資顧問は、アリババが米ヤフーから自社株20%を買い戻すのに必要な71億ドルの一部を調達するために設立された中国投資有限責任公司(CIC)主導のコンソーシアムに参加。コンソーシアムは資金調達の見返りにアリババ株5.6%を取得した。
 当時、アリババの評価額は約380億ドルだった。

 アナリストらの試算によると、現在のアリババの時価総額額は少なくとも1400億ドルに上る。
 つまり、コンソーシアムを通じた博裕投資顧問のアリババへの出資分は、1年半の間に3.5倍以上に増えたことになる。

 アリババは今年の第3・四半期に米国で株式を上場すると発表している。
 IPOの規模は、2012年の米フェイスブックの160億ドルを上回る可能性があるとみられている。

 また、2人の関係筋によると、博裕投資顧問は中国信達資産管理に約5000万ドルを投資。
 IPOに先立ち引き受けを行う「コーナーストーン投資家」(戦略的投資家)として、中国の全国社会保障基金(NSSF)やスイスの銀行大手UBS(UBSN.VX: 株価, 企業情報, レポート)などとともに名を連ねていた。

■<ヘッドラインリスク>

 一方、太子党の特権は必ずしも永久に続くわけではない。
 それがたとえ、存命の元国家主席の孫であったとしてもだ。
 薄煕来・元重慶市党委書記の失脚は、プライベートエクイティに出資する投資家たちのこうした考えをいっそう強固なものとした。

 外資系企業で働く投資家たちのなかには、「太子党ファンド」に出資することに慎重になる者もいる。
 新聞の一面に出て、取引が水泡に帰す可能性「ヘッドラインリスク」もささやかれる。
 習近平国家主席が汚職撲滅運動を強化するにつれ、こうした懸念は高まっている。

 ある欧州の投資家は、勤め先では太子党ファンドと一緒になって投資することについて意見が分かれているとし、
 「自分は反対だが、多くの同僚が賛成している。
 太子党ファンドはもろ刃の剣だ
と語った。

(Stephen Aldred記者、Irene Jay Liu記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)